HDDとSSDの寿命の違いや寿命を縮める原因、延ばすコツを解説。データ移行に便利なクローン方法も紹介しています。
パソコンや外付けストレージとして使用されるHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)は、大切なデータを保存するうえで欠かせない存在です。しかし、どちらも「寿命」がある消耗品であり、いつかは故障してしまう可能性があります。
「HDDとSSDではどちらが長持ちするのか?」「寿命を延ばす方法はあるのか?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、HDDとSSDの寿命の違いや仕組みを比較しながら、寿命を延ばすための5つの方法についてわかりやすく解説いたします。
HDDとSSDは、どちらもデータを保存するストレージですが、内部構造や寿命の仕組みには大きな違いがあります。ここでは、それぞれの寿命の特徴について詳しく解説いたします。
HDD(ハードディスクドライブ)は、磁気ディスク(プラッター)を高速で回転させながら、磁気ヘッドがデータを読み書きする仕組みです。内部は非常に精密な機械構造になっており、劣化や故障が発生します。
■ 一般的な寿命の目安:
使用年数:3~5年
稼働時間:20,000〜50,000時間
MTBF(平均故障間隔):50万〜200万時間(ただしあくまで理論値)
長期間使っていて突然動かなくなった、異音がする、動作が重いといった症状は、寿命のサインかもしれません。
SSD(ソリッドステートドライブ)は、NAND型フラッシュメモリにデータを保存する仕組みです。可動部分がないため衝撃に強く、高速で静音性も優れています。ただし、SSDには「書き込み回数の上限」という性質があります。これは、同じメモリセルに何度も書き込むことで、セルの絶縁体が劣化していくためです。
■ 寿命の指標:
TBW(Total Bytes Written):書き込み可能な総データ量
DWPD(Drive Writes Per Day):1日あたりに書き込めるドライブ容量の割合
P/E(Program/Erase)サイクル:書き込み・消去の回数(一般的に1,000~5,000回)
■ 一般的な寿命の目安:
使用年数:5~10年
TBWの例(500GBのSSD):
エントリーモデル:150TBW
高耐久モデル:600TBW〜1200TBW
なお、近年のSSDはコントローラやウェアレベリング機能(書き込みの偏りを防ぐ技術)が進化しており、昔よりも格段に長寿命になっています。
比較項目 HDD SSD 寿命の主な制約 機械的摩耗・物理的故障 書き込み回数の上限 衝撃への強さ 弱い(落下で故障しやすい) 強い(可動部なし) 長時間保管性能 強い(通電なしでも保持可能) 弱め(数年でデータ揮発あり) 読み書き速度 遅い 非常に速い 一般的な寿命 約3~5年 約5~10年
■ 結論:
高頻度の読み書きを伴う作業や高速処理が求められる場合はSSDが向いています。
低コストで大容量のデータ保存(特にあまり動かさない用途)にはHDDが有効です。
HDDやSSDは、正しく使えば数年間にわたって安定して動作します。しかし、使い方によっては本来の寿命よりも早く劣化・故障することがあります。ここでは、それぞれのストレージの寿命を縮める主な原因を詳しくご紹介します。
HDDは内部に可動部品を多く持つため、物理的な負荷や環境条件が大きく寿命に影響します。
▸衝撃や振動
HDDは高速回転するディスク(プラッター)と、繊細な磁気ヘッドで構成されています。落下や移動中の衝撃があると、ヘッドクラッシュと呼ばれる致命的な故障につながることがあります。
▸熱による劣化
高温の環境では、モーターや基板などの電子部品が劣化しやすくなります。特に夏場のPC内部の温度上昇には注意が必要です。
▸連続稼働・長時間使用
常に稼働しているHDDは、モーターの消耗が早まり、動作音が大きくなったり、動作不良の原因になったりすることがあります。
▸不良セクタの増加
ディスクの表面に読み書きできない領域(不良セクタ)が増えると、データの破損やシステムの不安定さにつながり、やがて完全に故障することもあります。
▸不適切なシャットダウン
電源を突然切るなどの不適切なシャットダウンは、HDDのヘッドが正しい位置に戻らず、ディスクにダメージを与える可能性があります。
SSDは可動部がない分、衝撃に強いというメリットがありますが、書き込み回数の制限があるため、使い方に注意が必要です。
▸頻繁な書き込み(特に大量の小さい書き込み)
SSDは書き込み回数に上限があるため、頻繁なログ保存やキャッシュの書き換えなど、細かいデータの繰り返し書き込みが寿命を縮める原因となります。
▸容量不足の状態で使用し続ける
SSDの空き容量が極端に少ない状態が続くと、ウェアレベリング(書き込みの偏りを防ぐ機能)が正常に機能せず、特定のセルだけに負荷がかかって劣化が早まります。
▸書き込みテストや不要なベンチマークの実行
寿命確認のために書き込みテストを何度も行うこと自体が、SSDの消耗につながるため注意が必要です。
▸ファームウェアの未更新
SSDの性能や耐久性は、ファームウェアのバージョンにも左右されます。古いファームウェアを使い続けると、最適化不足で寿命を縮めてしまうこともあります。
▸高温環境での使用
SSDも高温には弱く、セルの劣化スピードが早まります。通気性の悪い場所やファンの故障などにも気をつけましょう。
ポイント:HDD・SSDともに「正しい使い方」「適切な環境管理」「定期的なメンテナンス」が、寿命を延ばすカギになります。
HDDやSSDは見た目では劣化の有無が分かりませんが、Windows標準機能を使うことで現在の状態や寿命の目安を確認することができます。
ステップ 1. キーボードの「Windowsキー+R」を押し、「ファイル名を指定して実行」ウィンドウを開きます。「cmd」と入力して「OK」をクリックします。
ステップ 2. 黒いコマンドプロンプト画面が表示されたら、以下のコマンドを入力してEnterキーを押します。
wmic diskdrive get status
ステップ 3. 「Status」が表示され、「OK」と表示されていれば、現在の状態は正常です。
ポイント:この方法では「異常かどうか」の簡易判断しかできません。HDD/SSDの健康状態を詳しく数値で確認できる日本製の無料ソフト「CrystalDiskInfo」をおすすめします。
ステップ 1. 公式サイト(https://crystalmark.info/)から「CrystalDiskInfo」をダウンロードしてインストールします。
ステップ 2. ソフトを起動すると、自動的に接続されているストレージの情報が表示されます。
ステップ 3. 「健康状態」が「正常」と青色で表示されていれば問題ありません。その他、「使用時間」「温度」「リードエラーレート」などの詳細も確認できます。「注意」や「異常」と表示された場合は、バックアップを取りつつ、交換や修復を検討しましょう。
なお、SSDやHDDのメーカーによっては、純正の診断ツールを提供しており、より正確な診断やファームウェア更新も可能です。
メーカー名 | ツール名 | 備考 |
Western Digital | WD Dashboard | SSDの詳細な寿命や温度確認可 |
Samsung | Samsung Magician | Samsung製SSD専用ツール |
Crucial | Crucial Storage Executive | 健康状態やファーム更新対応 |
Intel | Intel Memory and Storage | Tool Intel製SSDの診断・最適化 |
このセクションでは、実際にどのような対策を取ればよいのか、5つの方法に分けてご紹介いたします。
HDDやSSDは、高温状態が長く続くと寿命が短くなる可能性があります。特にHDDは可動部品を持つため熱に弱く、SSDも高温が続くと書き込み性能や寿命に悪影響を及ぼします。
■ 適正な温度範囲の目安:
HDD:30〜45℃程度が理想的(最大でも50℃以下)
SSD:0〜70℃が動作保証範囲(ただし40℃前後が望ましい)
■ 温度管理のためにできること:
▸まずは、PCの設置場所を見直しましょう。
ステップ 1. パソコン本体が壁や家具に密着していないか確認します。
ステップ 2. 少なくとも背面と側面に5cm以上の空間を空けて、排熱がこもらないようにします。
ステップ 3. 直射日光が当たる場所や、暖房器具の近くに設置しないように注意します。
▸そして、パソコン内部の埃を掃除しましょう。
ステップ 1. パソコンの電源を切り、コンセントを抜きます。
ステップ 2. ノートPCであれば吸気口や排気口を確認し、エアダスターで優しく吹き飛ばします。
ステップ 3. デスクトップPCの場合は、側面パネルを開けて、内部のファンやヒートシンクに埃がたまっていないかをチェックします。
ステップ 4. 埃がたまっている場合は、掃除機(弱モード)やエアダスター、綿棒などで優しく除去します。
▸最後は、冷却ファンや冷却台を活用することもおすすめします。
ステップ 1. ノートパソコンを使用している場合は、USB接続の冷却台(ノートPCクーラー)を使うと効果的です。
ステップ 2. デスクトップPCでは、ケースファンを増設したり、ファンの位置や回転数を調整することでエアフローを改善できます。
ステップ 3. 高温になりやすい夏場は、扇風機やサーキュレーターで室内の空気を循環させるのも有効です。
HDDやSSDは、データの「読み書き」によって徐々に劣化していきます。特にSSDは書き込み回数に寿命の上限があるため、無駄な書き込みを減らすことが長寿命化につながります。ストレージの寿命が尽きる前に、万が一の備えとしてバックアップを定期的に行うことが非常に重要です。
■ バックアップの方法3つ:
▸外付けHDDやSSDへのバックアップ:外付けストレージを接続して、手動またはWindows標準機能(例:ファイル履歴)を使って定期的にデータを保存する方法です。コストを抑えつつ、大容量データも安全に保管できます。
▸クラウドストレージへのバックアップ:Google Drive、OneDrive、Dropboxなどのクラウドサービスを活用する方法です。インターネット環境さえあれば、どこからでもデータにアクセスでき、災害対策としても有効です。
▸バックアップソフトを使った自動バックアップ:AOMEI Backupperなどのソフトを使い、スケジュールに従って自動でバックアップを行う方法です。システム全体やパーティション単位のバックアップも可能で、復元も簡単です。
SSD(ソリッドステートドライブ)は、HDDとは異なる仕組みでデータを保存します。そのため、HDDのようにデフラグ(断片化整理)を行う必要はありません。むしろ、デフラグがSSDに対しては逆効果となり、寿命を縮める原因になることもあります。その代わりに、TRIM機能を活用することで、SSDのパフォーマンスを維持し、寿命を延ばすことができます。
ステップ 1. 「スタートメニュー」を開き、「cmd」と入力して「コマンドプロンプト」を検索します。右クリックして「管理者として実行」を選択します。
ステップ 2. コマンドプロンプトに以下のコマンドを入力して、TRIM機能が有効か確認します。
fsutil behavior query DisableDeleteNotify
ステップ 3. TRIMが無効になっている場合は、以下のコマンドを入力します。これで、TRIM機能が有効になります。
fsutil behavior set DisableDeleteNotify 0
■ HDDのデフラグ方法:
ステップ 1. 「スタートメニュー」を開き、「ディスクの最適化とデフラグ」を検索します。
ステップ 2. 「デフラグと最適化」のアプリをクリックして開きます。
ステップ 3. 開いたウィンドウで、デフラグを実行したいディスク(HDD)を選択します。「最適化」ボタンをクリックすると、デフラグが開始されます。
パソコンの電源管理は、ハードディスク(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)の寿命に影響を与える重要な要素です。急な電源オフや不適切なスリープ設定が原因で、ディスクに不具合が発生することがあります。正しい電源管理を行うことで、ディスクへの負荷を減らし、パフォーマンスの低下を防ぐことができます。
■ 電源オフ時やスリープ設定の確認・変更方法:
ステップ 1. 「スタートメニュー」を開き、「設定」を選択します。設定ウィンドウで「システム」をクリックします。
ステップ 2. 左側のメニューから「電源とスリープ」を選択します。
ステップ 3. 「電源とスリープ」の画面が表示されたら、「画面がオフになるまでの時間」「PCがスリープ状態になるまでの時間」を設定できます。これを使用しない時は短い時間に設定し、PCが長時間使われない場合にはスリープに移行するようにします。
■ 急な電源オフを避けるための方法:
ステップ 1. PCの使用を終了する前に、必ず「シャットダウン」または「再起動」を選択します。急に電源を切ることは避けてください。
ステップ 2. 万が一、急なシャットダウンや電源トラブルが発生しても、データの損失を最小限に抑えるため、定期的にバックアップを取っておくことが大切です。
HDDやSSDは、データを保存するために「空き容量」を必要とします。容量を使いすぎると、ディスクの動作が遅くなるだけでなく、書き込み回数が増え、寿命が縮まる可能性があります。特に、80%を超える容量使用が続くと、ディスクのパフォーマンスに悪影響を与えることが多いです。空き容量が十分にある状態で使用することで、ディスクのパフォーマンスを維持し、寿命を延ばすことができます。
■ 容量が一杯になるとどうなるか?
HDD:ディスクがほぼ満杯になると、ファイルが断片化し、データの読み書き速度が遅くなる可能性があります。これにより、パフォーマンスが低下し、操作が遅く感じることが多くなります。
SSD:SSDでは、空き容量が少ないと書き込み速度が低下します。SSDは空き容量があることで、効率的にデータの書き込みを行えるため、空き容量が不足するとパフォーマンスに影響を与えるだけでなく、書き込み回数の制限を早めてしまう可能性があります。
■ ディスク容量を確認する方法:
ステップ 1. 「スタートメニュー」を開き、「エクスプローラー」を選択します。
ステップ 2. 「PC」をクリックし、パソコンに接続されているディスクを表示します。
ステップ 3. 使用中のディスク(Cドライブやデータドライブ)を右クリックして、「プロパティ」を選択します。ディスクの容量と使用状況が表示されます。
■ ディスク容量を管理する方法:
ステップ 1. 不要なファイルを削除する:「設定」→「アプリ」から不要なアプリをアンインストールし、「設定」→「システム」→「ストレージ」で不要なファイル(キャッシュや一時ファイル)を削除します。
ステップ 2. ディスクのクリーンアップを行う:「スタートメニュー」→「ディスククリーンアップ」を検索し、ツールを開きます。「Cドライブ」を選択し、不要なファイル(システムファイル、インターネットの履歴、キャッシュファイルなど)を削除します。
ステップ 3. 容量の大きいファイルを管理する:写真や動画、インストールされているゲームなど、容量の大きいファイルは適宜外部ドライブやクラウドに保存することをおすすめします。
HDDやSSDが寿命を迎える前に、新しいディスクにデータをまるごと移行(=クローン)しておくことで、大切なデータやシステムをそのまま引き継ぐことができます。以下では、初心者の方でもできるクローン作成の手順を解説いたします。
クローン作業には専用のソフトが必要ですが、初心者の方にとっては操作が複雑に感じられることあります。そのような場合は、専門知識がなくても使えるAOMEI Partition Assistantをおすすめします。このソフトは、数クリックで現在のHDD/SSDを新しいディスクへ丸ごと移行できます。
ステップ 1. まず最初に、クローン元のディスク(現在使っているHDDなど)と、クローン先のディスク(新しいSSDなど)を同時にパソコンに接続します。
ステップ 2. AOMEI Partition Assistantをダウンロードし、インストールして起動しましょう。クローンしたいディスクを右クリックして「ディスクをクローン」を選びます。
ステップ 3. クローン先のディスク(新しいHDD/SSD)を選択し、「次へ」をクリックします。
ステップ 4. クローン元のディスクとクローン先のディスクが表示されます。クローン先のディスクがSSDの場合、「4Kアライメント」にチェックを入れます。
ステップ 5. 問題がなければ「確認」ボタンをクリックします。ツールバーの「適用」をクリックし、「続行」をクリックます。
ステップ 6. ディスクのクローン作業が完了したら、パソコンの電源をシャットダウンします。ドライバーを使ってパソコンの裏蓋を開け、現在のHDDや古いSSDのケーブルを慎重に外します。その後、固定用のネジやブラケットを外して取り出します。
ステップ 7. クローンを作成したSSDを挿入します。ケーブルをしっかりと接続し、取り外したネジやブラケットを元の位置に戻して固定します。パソコンの裏蓋を閉じてネジで留めます。バッテリーと電源ケーブルを再接続し、パソコンの電源を入れます。ほとんどのパソコンでは、HDDをSSDに交換すると、自動的にSSDから起動します。Windowsのロゴが現れ、通常通りにデスクトップが表示されれば、成功したと言えます。
HDDやSSDの寿命は、使い方や環境によって大きく変わってきます。こまめな温度管理や適切な設定を行い、定期的なバックアップやTRIMの活用などを通じて、できる限り寿命を延ばすようにしましょう。また、万が一に備えて早めにクローンを作成しておくことで、トラブルが起きた際も安心です。ぜひ、今回ご紹介した方法を実践し、大切なデータを守ってください。