BitLockerのPIN変更ができないときの原因と対処法
この記事では、BitLockerのPINを変更する手順と、変更できない場合の一般的な原因や解決策について詳しく解説します。権限不足やデバイスの互換性の問題にも触れています。
BitLockerはWindowsのディスクを暗号化する機能で、データを守るための大切なツールです。しかし、PINの変更がうまくいかないことがあります。この記事では、PINを通常通り変更する方法や、変更できない理由とその解決策について詳しく説明します。
BitLockerのPIN変更ができないよくある原因と対処法
このセクションではPIN変更ができないよくある原因を説明します。
1. 権限不足が原因で変更が失敗する
BitLockerのPINを変更することは、Windowsの重要なセキュリティ設定の一環です。この作業は、システムやデータを守るために管理者権限が必要です。通常のユーザーアカウントで試みると、以下のようなエラーや制限が出ることがあります:
- 「アクセスが拒否されました」
- PIN変更のオプションが無効になっている
- 操作が進まない
対処法1. 管理者アカウントでログインする
現在のアカウントが標準ユーザーの場合、PINを変更することはできません。管理者アカウントに切り替える必要があります。
ステップ 1. スタートボタンをクリックし、表示されたスタートメニューの「設定」を開きます。「アカウント」に移動し、「ユーザーの情報」をクリックすると、プロフィール写真の下にあなたのユーザー名が太字で表示されます。
ステップ 2. 表示されたアカウント名の下に「管理者」と書かれていれば、それは管理者アカウントです。書かれていない場合、システム管理者に管理者アカウントの情報を確認してください。
対処法2. 権限を昇格させる
ステップ 1. 「他のユーザー」パネルの下にあるユーザーアカウントをクリックし、「アカウントの種類の変更」と選択します。ユーザーアカウントをクリックすると、このオプションが表示されます。
※IT部門があると、通常のユーザーアカウントに一時的に管理者権限を与えてもらえることがあります。
ステップ 1. IT部門や管理者に連絡して、PINの変更をお願いします。
ステップ 2. リモートサポートが可能な場合、IT管理者がPINの変更を手伝ってくれることもあります。
2. TPMの設定が影響している
TPM(トラステッドプラットフォームモジュール)は、セキュリティキーを保存し、BitLockerがドライブを安全に暗号化するためのハードウェアです。TPMはPINと連携してBitLockerのセキュリティを向上させますが、TPMの設定や状態によってはPINの変更ができないことがあります。特にTPMの初期化や設定ミスが影響することが多いです。
📍関連記事:TPMとは?TPM2.0を有効にしてアップグレードする方法
ユーザー事例:PINの変更オプションが表示されない
BitLockerの管理画面を進めると、PINの変更オプションが表示されない、回復キーをUSBをキーにするか印刷するかの選択肢しか出てきません。起動時にPINコードを入力する方法を希望しています。
- マイクロソフトコミュニティからの質問
TPMに関連する問題と原因
- TPMが無効化されている:BIOS/UEFIの設定でTPMがオフになっていると、BitLockerがPINの変更を行えません。
- TPMの初期化が必要:TPMが適切に設定されていないと、BitLockerがTPMを使ったセキュリティ機能を妨げることがあります。
- TPMのバージョンが古い:TPMが1.2の場合、セキュリティ機能が制限され、一部の操作に影響が出ることがあります。TPM 2.0へのアップグレードが推奨されます。
- TPMの状態にエラーがある:TPMが正常に動作していないか、設定に問題があると、PINの変更が失敗することがあります。
📍関連記事:PCがUEFIかBIOSかを確認する方法
対処法1. TPMの状態を確認する
WindowsでTPMの状態を確認して、正常に動作しているかを確認します。
ステップ 1. Windowsキーを押して「tpm.msc」と入力し、Enterキーを押します。
ステップ 2. 「TPM管理ツール」が表示されます。
ステップ 3. 状態を確認します:
TPMが実装されている場合:(画像はTPM2.0です)
TPMを実装していないか、TPM機能を無効にしている場合:
対処法2. TPMを有効化する
TPMが無効になっている場合、BIOS/UEFIの設定で有効化する必要があります。
ステップ 1. PCを再起動し、起動時にBIOSまたはUEFIの設定画面を開きます(通常はDelキーやF2キーを押します)。
ステップ 2. セキュリティまたはトラステッドコンピューティングの項目を見つけます。
ステップ 3. 「TPM」または「Intel PTT」(Intel CPUの場合)を「有効」にします。
ステップ 4. 設定を保存して再起動します。
対処法3. TPMを初期化する
エラーや構成の競合があるときは、TPMをリセットすることで問題を解決できます。
ステップ 1. Windowsキーを押して「tpm.msc」と入力し、Enterキーを押します。
ステップ 2. 右側から「TPMをクリア」または「TPMを初期化」を選びます。
ステップ 3. システムが再起動し、指示に従ってTPMを初期化します。
※TPMの設定を変更した後、PINを通常の方法で再設定してみてください。
3. グループポリシーがPIN変更を制限している
グループポリシー(GPO)は、Windows環境でユーザーの権限やセキュリティ設定をまとめて管理する仕組みです。以下の理由でPINの変更が制限されることがあります:
- セキュリティ基準の遵守: PINの変更によるリスクを避けるため
- IT部門の管理要件: PINや暗号化の設定を一括で管理するため、ユーザーの変更を制限している
- 特定のポリシー設定: BitLockerに関する特定のポリシーが適用されている
対処法1. グループポリシーの影響を確認する
ステップ 1. WindowsキーとRキーを同時に押し、「gpedit.msc」と入力してEnterを押します。これで「ローカルグループポリシーエディター」が開きます。
ステップ 2. グループポリシーの中でBitLockerのPIN変更に関連する設定を探します。
(ナビゲートパス:コンピューターの構成 > 管理用テンプレート > Windowsコンポーネント > BitLockerドライブ暗号化 > オペレーティングシステムのドライブ)
確認する設定は「スタートアップ時に追加の認証を要求する」「スタートアップの拡張PINを許可する」「スタートアップに対するPINの長さの最小値を構成する」この三つで、それぞれダブルクリックし、新しい画面で「有効」にします。
対処法2. グループポリシーの制限を解除する
グループポリシーの設定を変更するには、管理者権限が必要です。以下の手順で、PINの変更ができるように設定します。
ステップ 1. ポリシー設定画面で「スタートアップに対するPINの長さの最小値を構成する」を見つけます。
ステップ 2. ダブルクリックし、新しい画面で以下の設定を調整します:
最小文字数を設定します(おすすめは8桁以上、できれば10桁)。
ステップ 4. 変更を反映させるために、「cmd」と入力して右クリックし、「管理者として実行」を選び、次のコマンドを実行します:
gpupdate /force
4. デバイスの互換性やドライバーの問題
古いデバイスや互換性のないドライバーが、PINの変更を妨げることがあります。
デバイスの互換性やドライバーの問題が起こる理由
- ハードウェアの互換性の問題:古いマザーボードやBIOS/UEFIの設定が、BitLockerのセキュリティ機能(特にTPMやPIN認証)に対応していないことがあります。TPMモジュールがない、または古いバージョン(1.2など)の場合、PINの変更がうまくいかないことがあります。
- ドライバーの問題:BitLockerがドライブの暗号化を行うために必要なドライバーが壊れているか、最新でない可能性があります。ストレージデバイスやTPMのドライバーが正しく動作しないと、PINの変更が失敗することがあります。
- BIOS/UEFIの設定とバージョン:最新のBIOS/UEFIがインストールされていないと、TPMやBitLockerの機能が正しく動作しないことがあります。セキュアブートやTPMの設定が適切でない場合も影響を与えることがあります。
対処法1. TPMとBIOS/UEFIの確認と更新
ステップ 1. Windowsキーを押して「tpm.msc」と入力し、Enterを押します。TPMが利用可能かどうか確認します。TPMのバージョンが1.2または2.0であることを確認します。
ステップ 2. 「スタート」→「Windows 管理ツール」→「システム情報」の順にクリックし、システム情報ツールを開いて、BIOS/UEFIのバージョンを確認します。
※メーカーの公式サイトで最新のバージョンを調べ、必要があればアップデートを行います。TPMやBIOS/UEFIのアップデートは、メーカーが提供するツールや手順に従って慎重に実施してください。
対処法2. ドライバーの確認と更新
ステップ 1. Windowsキー + X を押して、「デバイスマネージャー」を開きます。
ステップ 2. 「セキュリティデバイス」セクションでTPMドライバーを見つけ、右クリックして「ドライバーを更新」を選びます。
ステップ 3. 「ディスクドライブ」セクションを開いて、ストレージデバイスのドライバーを確認します。
ステップ 4. 「ドライバーの更新」を選択し、自動更新するか、メーカーのサイトから最新のドライバーをダウンロードしてインストールします。
※或いは不具合のあるドライバーを再インストールします。
ステップ 1. デバイスマネージャーで対象のドライバーを右クリックし、「アンインストール」を選びます。
ステップ 2. 再起動すると、Windowsが自動的にドライバーを再インストールします。もしドライバーがうまくインストールされない場合は、デバイスの公式サイトから最新のドライバーを手動でダウンロードしてインストールしてください。
対処法3. BIOS/UEFI設定の最適化
ステップ 1. BIOS/UEFIの設定画面で「Secure Boot」オプションを探し、Enabledに設定します。
ステップ 2. TPMまたはIntel PTT(Platform Trust Technology)が有効になっているか確認します。
ステップ 3. BIOS/UEFIの設定で「CSM Support」を無効にすると、UEFIモードが優先され、BitLockerが正しく動作することがあります。
5. BitLocker回復キーが登録されていない
BitLocker回復キーは、BitLockerが予期しない状況でアクセスを制限したときに使うための安全装置です。正しく登録されていないと、PINの変更ができなくなることがあります。
対処法1. 回復キーが登録されているかどうかを確認する
ステップ 1. Windowsキーを押して「cmd」と入力し、右クリックして「管理者として実行」を選びます。
ステップ 2. 次のコマンドを入力します(C:は変更したいドライブのドライブレターに置き換えてください):
manage-bde -protectors -get C:
出力に「Numerical Password」としてBitLocker回復キーが表示されていれば、BitLocker回復キーが登録されています。
対処法2. BitLocker回復キーが登録されていない場合
BitLocker回復キーが登録されていない場合、以下の方法で登録を行います。
ステップ 1. Windowsキー + S を押して、「BitLocker」と入力し、「BitLockerの管理」を選びます。
ステップ 2. 「BitLocker回復キーのバックアップ」を選択し、次のいずれかの方法でバックアップを保存します:
※BitLocker回復キーが登録されていない場合は、エラーが出るので、一度BitLockerを一時停止して再設定します。
ステップ 1. 管理者権限でコマンドプロンプトを開き、次のコマンドを入力します(C:は変更したいドライブのドライブレターに置き換えてください):
manage-bde -protectors -disable C:
ステップ 4. BitLockerを再度有効にすると、新しいBitLocker回復キーが登録されます。
最後に、BitLocker回復キーを登録した後にPINの変更を行ってください。
おまけ:より簡単にBitLockerを管理する
BitLockerの管理は初心者には難しいことがあります。手順が多く、コマンドラインを使う必要があるからです。また、この機能はWindows 10/11のHome版では利用できません。
しかし、すべてのWindowsシステムに対応した使いやすい暗号化ツールがあります。それは無料のAOMEI Partition Assistantです。
- ✎AOMEI Partition Assistantのメリット:
- ほとんどのWindowsシステム、特にWindows 11/10 Home版をサポートしています(アップグレード必要)。
- BitLockerを管理するための多様な機能を提供し、回復キーのバックアップやパスワード変更、ドライブのロック・アンロック、BitLockerの有効化・無効化が可能です。
- 洗練されたインターフェースと直感的な操作で、異なるスキルレベルのユーザーに合わせており、特に初心者に優しい設計です。
- AES暗号化アルゴリズムを採用し、Microsoft BitLockerの厳しいセキュリティ基準に従っています。
AOMEI Partition AssistantでBitLockerを管理する手順は次の通りです。
最初に、AOMEI Partition Assistantをインストールして起動し、暗号化したいドライブを接続します。その後、「ツール」をクリックしてBitLockerを選択します。これで、BitLockerの管理が可能になります。
►BitLockerの有効化と無効化
メニューから対象のドライブを選び、BitLockerを有効または無効にするオプションを選択します。回復キーとパスワードを使ってドライブにアクセスできます。
►回復キーのバックアップ
回復キーをバックアップしたい暗号化されたドライブを見つけ、「回復キーをバックアップ」オプションをクリックします。バックアップ方法は「ファイルに保存」または「回復キーを印刷」を選べます。
►ドライブのロックとロック解除
ドライブがロックされていない場合、「ドライブをロック」オプションをクリックして直接ロックできます。ロックを解除するには、「ドライブロック解除」オプションをクリックします。
►BitLockerのパスワード変更
AOMEI Partition Assistantを使って、今のパスワードや回復キーでパスワードを変更できます。
BitLockerのPINを変更する方法3つ
まずは、通常にPINを変更する3つの方法を紹介します。
方法1: 設定画面から変更する
ステップ 1. スタートメニューを開き、「コントロールパネル」と入力して選びます。「システムとセキュリティ」をクリックし、「BitLockerドライブ暗号化」を選択します。
ステップ 2. BitLockerが有効なドライブの隣にある「PINを変更」をクリックします。
ステップ 3. 現在のPINを入力し、新しいPINを2回入力します(確認用)。最後に「変更」をクリックして完了です。
方法2: PowerShellを使って変更する
ステップ 1. スタートメニューを右クリックして、「管理者としてWindows PowerShell」を選びます。或いは、スタートメニューで「Windows PowerShell」フォルダ>「Windows PowerShell」に移動します。
ステップ 2. 次のコマンドを入力します(C:はPINを変更したいドライブのドライブレターに置き換えてください):
Manage-bde -changepin C:
ステップ 3. 画面の指示に従い、現在のPINと新しいPINを入力します。
方法3: コマンドプロンプトで変更する
ステップ 1. スタートメニューを開き、「cmd」と入力して右クリックし、「管理者として実行」を選びます。
ステップ 2. 次のコマンドを入力します(C:は変更したいドライブのドライブレターに置き換えてください):
manage-bde -changepin C:
ステップ 3. 指示に従ってPINを変更します。
まとめ
BitLockerはデータを守るための強力なツールですが、PINを変更できない場合には迅速な対応が必要です。まずは管理者権限を確認し、TPMやグループポリシーの設定を見直します。次に最新のドライバーをインストールし、BitLocker回復キーを登録します。これらの手順を順番に確認することで、問題を解決し、BitLockerを安全に運用できます。PIN変更に問題があるときは、原因を特定し、それに合った解決策を考えることが大切です。