回復パーティションがない場合、Windowsの復旧ができなくなる可能性があります。本記事では、回復パーティションの役割や確認方法、復旧方法を詳しく解説します。
パソコンのトラブル時に、システムを修復するための「回復パーティション」は非常に重要な役割を果たします。しかし、いざ修復が必要になった際に「回復パーティションがない」と気づくことがあります。では、回復パーティションがないとどのような影響があるのでしょうか?また、どのように復旧すればよいのでしょうか?
本記事では、回復パーティションの役割や確認方法、消失する原因、そして作成・復旧する方法について詳しく解説します。
回復パーティションとは、Windowsの回復環境(Windows Recovery Environment, 略称:Windows RE)を格納している専用の隠し領域のことです。通常、パソコンのハードディスク(HDD)やSSD内に存在し、Windowsのインストール時に自動的に作成されます。
回復パーティションは、「PCが正常に起動しない」「システムファイルが破損した」などのトラブル発生時に、修復やリカバリーを行うための重要な機能を担っています。
回復パーティションには、以下のような重要な役割があります。
►① システム回復オプションを提供
回復パーティションが存在することで、Windowsの「回復オプション」メニューを利用できます。例えば、次のような機能が含まれています。
⇒ これらの機能は、回復パーティションがあることで簡単に利用できます。
►② Windowsの「このPCを初期状態に戻す」機能を実行
Windowsには、システムを初期状態に戻す「リセット機能」があります。回復パーティションがある場合、次の2つのオプションが利用可能になります:
⇒ 回復パーティションがないと、この機能が正常に動作しない可能性があります。
►③ システムイメージからの復元をサポート
回復パーティションには、システムを復元するための基本的なファイルが含まれています。これにより、あらかじめ作成したシステムイメージを使用して、Windowsを正常な状態に戻すことが可能です。
例えば、「Windowsが起動しない」「システムファイルが破損した」といった場合に、システムイメージを使ってWindowsを修復できるため、再インストールの手間を省けます。
⇒ システムクラッシュ時の復旧をスムーズにするために重要な役割を持っています。
►④ Windowsの自動修復機能をサポート
Windowsには、起動時にシステムの問題を自動的に修復する「自動修復」機能があります。この機能は、回復パーティションに保存されているWindows REを利用するため、回復パーティションがないと自動修復が動作しない可能性があります。
⇒ システムが正常に起動しなくなった際、回復パーティションがあることで自動修復が機能し、問題を解決できることがあります。
回復パーティションは、通常100MB~1GB程度のサイズで、Windowsのバージョンによって異なります。
Windowsバージョン | 回復パーティションのサイズ |
Windows 7 | 約100MB |
Windows 8 / 8.1 | 約300MB |
Windows 10 | 約500MB |
Windows 11 | 約600MB~1GB |
また、回復パーティションは通常「隠しパーティション」として設定されており、エクスプローラーには表示されません。そのため、知らず知らずのうちに削除されてしまうことがあります。
回復パーティションは、Windowsの修復やリカバリー機能を提供する非常に重要な領域です!
回復パーティションがPCに存在するかどうかを確認する方法はいくつかあります。ここでは、Windowsの標準機能を使った確認方法を紹介します。
Windowsの「ディスクの管理」を使うと、回復パーティションの有無を視覚的に確認できます。
ステップ 1. Windowsキー + Rを押して「ファイル名を指定して実行」を開きます。「diskmgmt.msc」と入力し、Enterキーを押します。
ステップ 2. 「ディスクの管理」画面が開いたら、上部にCドライブなどのパーティションが表示されます。その中に「回復パーティション」と表示された小さな領域があるか確認します。
ステップ 3. 「回復パーティション」 と表示されていれば、回復パーティションが存在します。もし回復パーティションが見つからない場合は、削除されている可能性があります。
ヒント:回復パーティションは通常 「100MB〜1GB」 程度のサイズで、OSによって異なります。ディスクの管理では、回復パーティションの詳細(ファイルの内容)は確認できません。
「ディスクの管理」では詳細が見えない場合、コマンドプロンプトのdiskpartコマンドを使うことで、より詳しく確認できます。
ステップ 1. 「Windowsキー+Rキー」を押し、「diskpart」と入力し、「Enter」キーを押してDiskpartユーティリティを開きます。
ステップ 2. 次のコマンドを入力し、Enterキーを押します。ここで、「回復パーティション」と表示された領域があるか確認します。回復パーティションが存在する場合、回復またはRecoveryと表示されます。
list disk
select disk X(OSがインストールされているディスクを選択)
list partition(パーティションの一覧を表示)
回復パーティションが消失する原因はいくつか考えられます。以下に、代表的な原因を詳しく解説します。
◉1. Windowsのクリーンインストールやアップグレード
Windowsを再インストールしたり、新しいバージョンへアップグレードした際に、回復パーティションが削除されることがあります。
◉2. ディスクのパーティション変更・再構成
パーティションを変更したり、Cドライブを拡張した際に、回復パーティションが削除されることがあります。
◉3. 誤操作や意図しない削除
ユーザーの操作ミスや、不要なパーティションだと思い削除してしまうこともあります。
◉4. ウイルスやマルウェアによる影響
ウイルス感染や悪意のあるマルウェアにより、回復パーティションが破損・削除されることがあります。
回復パーティションがないと、Windowsのトラブル発生時にさまざまな影響を受ける可能性があります。ここでは、具体的な影響について詳しく解説します。
▌1. Windowsの「回復オプション」が使えなくなる
回復パーティションには、Windowsの回復環境(Windows RE)が含まれています。この領域がないと、「回復オプション」を利用できなくなる場合があります。
▌2. Windowsが起動しなくなった際の修復が難しくなる
通常、Windowsが起動できなくなった場合、回復パーティションから回復環境を起動し、修復を試みることができます。しかし、回復パーティションがない場合は、外部の回復メディアがないと修復できません。
▌3. Windowsの「セーフモード」にアクセスできない
回復パーティションがないと、回復環境経由でのセーフモード起動ができない可能性があります。
▌4. Windows Update後に問題が発生しやすくなる
Windowsの大型アップデート(Feature Update)では、回復パーティションを使用してシステムの更新や修復を行うことがあります。回復パーティションがない場合、更新時にエラーが発生することがあります。
▌5. Windowsのリカバリー機能が使えない
Windowsには「工場出荷状態に戻す」機能がありますが、回復パーティションがないとこのオプションを使用できないことがあります。
回復パーティションがない場合、手動で作成(復旧)することが可能です。
Windowsの回復環境(WinRE)が無効になっているだけの場合、コマンドを使用して簡単に再有効化できます。
ステップ 1. 「スタート」ボタンを右クリックし、「コマンドプロンプト(管理者)」を選択します。
ステップ 2. 現在の回復環境の状態を確認するために、以下のコマンドを入力し、Enterキーを押します。「Windows RE 状態: 無効」と表示されている場合、回復環境が無効になっています。
reagentc /info
ステップ 3. 以下のコマンドを入力して、回復環境を有効化します。
reagentc /enable
ステップ 4. PCを再起動し、「設定」>「システム」>「回復」から「回復オプション」が表示されているか確認してください。既存の回復パーティションが削除されていなければ、この方法で回復環境が復旧できます。この方法で解決しない場合は、回復パーティション自体が削除されている可能性があるため、次の方法で新しく作成してください。
回復パーティションが完全に削除されている場合、新しく回復パーティションを作成し、Windowsの回復環境を復旧する必要があります。
ステップ 1. まずはディスクの空き領域を確保します。回復パーティションを作成するには、500MB~1GB程度の未割り当て領域が必要です。「スタート」ボタンを右クリックし、「ディスクの管理」を開きます。
ステップ 2. Cドライブの後ろに「未割り当て領域」があるか確認します。もし未割り当て領域がない場合は、「Cドライブを縮小」して500MB以上の空き領域を確保してください。
ステップ 3. 「スタート」ボタンを右クリックし、「コマンドプロンプト(管理者)」を選択します。「diskpart」と入力してdiskpartを起動します。
ステップ 4. 次のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
list disk
select disk 0(回復パーティションを作成するディスク、通常はDisk 0を選択)
list partition
create partition primary size=1000(1000MB=1GBのパーティションを作成)
set id=27(回復パーティションとして設定)
format fs=ntfs quick
exit
ステップ 5. 「スタート」>「設定」>「更新&セキュリティ」>「詳細スタートアップ」>の「回復」をクリックし、「今すぐ再起動する」をクリックします。
ステップ 6. 回復環境に入ったら「トラブルシューティング」>「詳細オプション」>「コマンドプロンプト」を選択してください。
ステップ 7. 回復環境を回復パーティションに適用するには、次のコマンドを入力し、Enterキーを押します。「操作は正常に完了しました。」と表示されれば成功です。
reagentc /setreimage /path R:\Recovery\WindowsRE
reagentc /enable
ステップ 8. PCを再起動し、「設定」>「システム」>「回復」から、「回復オプション」が正常に動作するか確認してください。
回復パーティションを手動で作成するのが難しい場合は、USB回復ドライブを作成して代用する方法がおすすめです。USB回復ドライブがあれば、回復パーティションがなくてもWindowsを修復したり、システムを復元したりすることが可能です。AOMEI Partition Assistantは優れた回復ドライブ作成ツールです。このツールは、多くのコマンドを入力する必要がなく、マウスのクリックだけで作成できます。
ステップ 1. USBをパソコンに接続して、AOMEI Partition Assistantをインストールして起動します。「ツール」>「ブータブルCD/USBを作成」をクリックします。
ステップ 2. 「USBブートデバイス」のドロップダウンメニューにUSBドライブを選択して「続行」をクリックします。
ステップ 3. 次に、USBがフォーマットされるため、重要なデータをバックアップしてくださいと表示されます。完了したら、「はい」をクリックしてください。
ステップ 4. そして、「はい」をクリックしUSBの作成が開始します。数分がかかるので、少々お待ちください。
回復パーティションは、Windowsのトラブル発生時に重要な役割を果たします。削除やシステム変更によって消えることもあるため、事前に確認し、必要なら手動で復旧する方法を知っておくことが重要です。もし回復パーティションを作成するのが難しい場合は、USB回復ドライブを作成することで対応できます。万が一のトラブルに備えて、適切な準備をしておきましょう。